LDT株式会社

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2025.09.09

サービス情報

知財が切り開く新市場――スタートアップが示す“攻めのIP戦略

スタートアップにとって、知的財産は“守り”だけでなく市場を開く「攻めの武器」です。LDT株式会社(東京都渋谷区)は2025年5月、112件の技術アイデアをぎゅっと整理し、12件の特許群としてまとめて出願しました。今回はLDT代表取締役CEOの白石和也が、LDT知的財産顧問の中畑稔弁理士(One ip弁理士法人 代表)と松本芳樹弁理士とともに、その舞台裏を語ります。今回出来上がった12特許群「AgeTech パテントアンブレラ™」は、LDTが今年スタートした2サービス「ケアシフト」(介護・看護向けスキマバイト)と、「マッチドライブ」(スキマバイト対応人材マッチングシステムを自社ブランドで簡単構築できるサービス)を丸ごとカバーし、法的リスクを最小限に抑えます。知財を中心に技術連携を広げ、超高齢化社会の現場課題に応えるプラットフォームづくりを進める計画です。LDTは今後も数百件規模で特許を追加し、知財戦略をさらに強化していく予定です。

 

 


左からLDT株式会社 代表取締役CEO:白石和也、LDT株式会社 知的財産顧問 :中畑 稔 弁理士 (One ip弁理士法人 代表弁理士)、One ip弁理士法人 松本芳樹弁理士

 

パテントアンブレラとは何か

司会 「AgeTech(※)パテントアンブレラ」について教えてください。
中畑 「パテントアンブレラ」という呼び方は私たちが作った造語です。世間でよく耳にする「パテントプール」は、複数の企業が特許を持ち寄り「お互い訴えない」関係を築く仕組みですが、今回のアンブレラは LDT株式会社(以下、LDT) が一社で差した大きな傘というイメージになります。リード役が明確に存在し、その下に提携先や将来のグループ会社を迎え入れる前提なので、傘として機能させるには “穴の空いていない布” が欠かせません。そこで1、2件の特許では到底足りず、LDT社内から大量のアイデアを集めて出願書類に盛り込み、後で本格的に権利化できる状態を整えました。

 


※AgeTech(エイジテック) 高齢化社会で生じる “暮らし・健康・介護・社会参加” にまつわる課題を、デジタル技術で解決・軽減しようとする製品・サービスの総称です。

 

 

【参考】PRTIMESプレスリリース
「超高齢化社会の介護・看護人材不足に挑む 12特許を集約出願  112技術を体系化した「AgeTech パテントアンブレラ™」構築」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000217.000053069.html

タイミングと狙い

中畑 今回アンブレラを張ったのは、LDTが葬儀 DX だけでなく、今年ローンチした「ケアシフト」(介護・看護向けスキマバイトサービス)や、「マッチドライブ」(他社が自社ブランドで利用できるスキマバイト対応の人材マッチング基盤)などAgeTech領域に事業を広げようとしている転換期だったからです。新しい領域の技術を守ると同時に、後発企業とも安心して協力できる健全な市場を先に形づくり、適切な競争と協調のバランスを保つドライバーになりたいという思いがありました。

 

112 の技術を 12 件に束ねた理由

司会 112の技術を12本の出願にまとめた背景を解説してください。
中畑 日本は先願主義(※)なので、まず出願することが何より重要です。もし112件すべてを個別に出願すれば、手数料だけでスタートアップ企業が息切れしてしまいます。そこで「束ねられるものは束ね、初期コストを抑える」戦術を採りました。12件にまとめても先願権は失われませんし、のちほど事業の進捗に合わせて分割出願し、請求項の骨を入れ替えることも可能です。私は以前携わった事業でも3日で百本分の特許をまとめて書き、一気に出願しておいて後からばらす方法を実践しました。

※先願主義 「同じ発明なら、特許庁へ先に出願した人が権利を取れる」というルール。どちらが先に考えたかではなく、出願日が早いほうが優先されます。

 

司会 112件を12の特許群にした手順をわかりやすく説明してください。
中畑 手順は4段階です。まず「面白いと思ったら全部書く」。特許になるかは後で判断するので、とにかく出す。次に「付せんを貼る」。アイデアが入力・前加工・処理・出力のどこに当たるかをタグで示し、入力ならスマホやウェアラブルなど細かいタグも付けます。3つめは「似たものを集める」。同じタグが3つ以上重なったら1山としてグループ化し、その山が12できました。最後に「山ごとに特許を書く」。山の中心アイデアを請求項の幹に、残りを具体例として明細書に詰め込み、一度に傘の布を広げたわけです。
松本 今は布が広がった状態で、事業の進み方を見ながら布に骨を入れて強化したり、外部に任せたりするフェーズに移ります。

 

LDT 知的財産顧問 中畑稔 弁理士 (One ip弁理士法人 代表弁理士)

 

 

スタートアップならではのコスト戦略

司会 コスト削減も目的ですか?
中畑 私たちが目指すのは「生き残るスタートアップ企業を増やす」ことです。従来の大企業型支援は、起案件数による従量課金が一般的なので手数料が膨らむため資金に制約のあるスタートアップには重荷になります。先に束で出願して資金繰りを守り、資金調達が進んでから分割出願で追加コストを負担する方が合理的ですし、戦略としても柔軟です。この方法論は、スタートアップのインハウス経験の賜物です。

 

アンブレラがもたらす優位性

司会 今回のアンブレラが LDT にどのようなメリットをもたらすのでしょう。
白石 最大のメリットは、自社の強みを強化しつつ競合から身を守る盾を手に入れられる点です。スポットバイトやフレンドワーク(LDTにて特許取得済の領域)、アルムナイ、給与の立替払いなどの領域は新しい概念の働き方をする領域なので知財を活用して自分達の強みと競合防御力を高めることができる領域だという認識をしています。
中畑 特許を取ろうという発想自体が出にくい業界で先に押さえる意味は大きいですね。
白石 私たちは「超高齢化社会を支えるインフラ」を目標にしています。そのインフラを強固にするには知財が不可欠で、即時払い関連特許などブルーオーシャン領域は先んじて確保しておく必要がありました。

 

One ip弁理士法人 松本芳樹 弁理士

 

知財を重視する背景

中畑 私は創業期からLDTを存じていますが、当初から特許や商標を積極的に取得していましたね。
白石 私が以前経営していたドローン事業で、特許によって交渉力が劇的に変わる場面を目の当たりにしました。特許が経営の主導権を左右する体験があったため、今回も「まず傘を差す」ことに迷いはありませんでした。

社内カルチャーと報奨制度

司会 大量の出願作業のメリット・デメリットは。
白石 短期的に見れば開発は若干滞りますが、競合特許を精査しながら議論するので機能や UI/UX が洗練されます。特許が成立すると1件の権利化に必要なアイデアを出した人数でインセンティブを人数割りで支給する制度も導入しました。プロダクトマネージャーやマーケティング担当者も積極的にアイデアを提出しています。
松本 大企業のノルマ型特許出願制度と違い、LDT では「とりあえず投げる」ハードルが低く、自発性が高い文化が根付いていると思います。
中畑 LDTと当事務所でやりとりしているコミュニケーションツール上でも「この実装は抵触しませんか?」という質問が日常的に飛び交い、知財が開発現場の共通言語になっていると感じます。

 

LDT株式会社 代表取締役CEO:白石和也

 

フラットな組織と採用基準

白石 組織は極力フラットにしており、人は対等であり役職は責任範囲を示すだけです。採用では物事の本質を捉える力とそれを実行に移す行動力を重視します。
松本 LDTとやり取りする中で、複数の視点を切り替えられる社員が多いと感じます。
中畑 地頭と発信力が両立したチームは再現が難しく、組織そのものが御社の大きな強みになっていると思います。
白石 いまのところ、関係者や競合から大きな反応はありません。しかし、特許の傘を持つことで「市場を主導する意志」を示せます。特許公開前なので競合は内容を把握できず、様子をうかがうしかありません。
松本 特許を束で示すと「傘の中に入るか、自前で行くか」を明確に迫る効果があります。
中畑 ソフトウェアは一本の特許なら迂回が容易ですが、束になると市場全体をコントロールしやすくなります。

 

 

知財を経営資源に

白石 スタートアップこそ知財を攻めの資産と捉え、毎年確実に予算と人材を投じるべきです。
中畑 LDTのように、知財で会社が面白くなるロールモデルを増やし、「知財は守りだけでなく攻めにも使える」ことを広めたいですね。
松本 私自身、LDTの支援者であると同時にファンとして 特許の傘がどこまで大きくなるか楽しみにしています。

 

(終)

 

■三者対談参加者のプロフィール

・LDT 知的財産顧問 中畑稔 弁理士 (One ip弁理士法人 代表弁理士)

横浜市立大学大学院修了後、特許事務所に入所する。2013年にコロプラに入社、東証一部上場後に退職。複数のスタートアップにて知財部門を創設し取締役やCIPOとして資金調達に貢献。2017年よりドローンファンドと共に投資先の知財支援を行う。スタートアップ支援に特化したOne ip弁理士法人とModel-based知財開発合同会社を創業し知財支援と資金支援を行う。その他、内閣府知財推進局、産構審特許制度小委、特許庁WGを歴任する。

 

・One ip弁理士法人 松本芳樹 弁理士

東京農工大学大学院修士課程修了(情報コミュニケーション工学)。大手Sierにおいてシステムエンジニアとして公官庁のシステム設計、構築、運用の業務に従事。その後、知的財産に係る業界に魅力を感じ、特許事務所へ転職。情報処理分野を主たる担当技術分野としつつ、機械制御や診断技術、製造技術などの多岐にわたる分野にも対応。多くの知財のタネを有し、将来性の高いスタートアップ企業に対して、その企業における様々な活動のための知財の発掘から活用までのワンストップの知財サポートによって、企業価値を知財にて高めるように貢献していきたいとの思いから、One ip弁理士法人に参画。

 

・LDT株式会社 代表取締役CEO:白石和也

2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。2019年9月当社を創業。

 

今後のサービス展開

・ケアシフト(2025年8月ローンチ) https://careshift.jp/

 

介護・看護現場に特化したスキマバイト・人材マッチングサービス。

“AgeTech パテントアンブレラ”で守られた技術を活用し、夜勤・休日シフトの負担軽減、コミュニティ形成、緊急スタッフ手配などをスムーズに実現。

 

 

・マッチドライブ(2025年9月ローンチ) https://matchdrive.jp/

スキマバイト対応人材マッチングシステムを自社ブランドで簡単構築できるサービス。

“AgeTech パテントアンブレラ”で守られた技術をもとに、業界・地域ごとの課題に対応可能な仕組みで、多分野の人材不足を支援します。

 

 

■LDT株式会社概要

会社名:LDT株式会社

代表者:代表取締役CEO 白石和也

設立:2019年9月20日

所在地:

<本社>

東京都渋谷区渋谷2丁目-3-5 COERU渋谷二丁目3階

<福岡支店>

福岡県福岡市中央区舞鶴1丁目1-3 リクルート天神ビル4階

<佐賀支店>

温泉ワーケーションLabo嬉野

佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙738 和多屋別荘内

 

事業内容:

AgeTech(エイジテック)プラットフォーム事業

AgeTech(エイジテック)関連のソフトウェア開発・提供事業

AgeTech(エイジテック)関連のコンサルティング事業

 

Webサイト:https://le-tech.jp/

 

葬儀社向けサービス

・クラウド型葬儀顧客管理システム

「スマート葬儀」(https://smartsougi.jp/

・葬儀業界専門の転職・求人・人材紹介サービス

「スマート葬儀ジョブ」(https://smartsougi-job.jp/

 

一般のお客様向けサービス

・ライフエンディングプラットフォーム

「やさしいお葬式」(https://y-osohshiki.com/

・僧侶派遣サービス

「やさしいお坊さん」(https://y-osohshiki.com/obousan

・介護職の求人募集、転職情報

「ケアジョブ」(https://www.mjc-carejob.com/

・看護師の求人募集、転職情報

「ナースジョブ」(https://www.mjc-nursejob.com/

・有料老人ホーム紹介

「有料老人ホーム情報館」(https://www.careproduce.jp/showroom.html)

・自宅、老人ホームへの訪問マッサージ

「なごみ治療院」(https://www.nagomi-rehabilimassage.com/

 

■企業のお客様向けサービス

・スキマバイト対応人材マッチングシステムを自社ブランドで簡単構築

「マッチドライブ」(https://matchdrive.jp/)
・介護・看護のスキマバイトマッチングサービス

「ケアシフト」 ( https://careshift.jp/ )

 



■One ip弁理士法人概要

法人名:One ip弁理士法人

代表弁理士:中畑 稔

設立:2018年4月(前身特許事務所 創業 2017年5月)

所在地

   東京都中央区京橋2丁目7-14 ビュレックス京橋208