コラム
2025.06.09
IT活用で生まれた余力を葬儀の接客品質へ――ITアナログ共存モデルが創る付加価値 全国JA葬祭経営研究会 講演レポート
2025年6月4日、横浜市のナビオス横浜で開催された全国JA葬祭経営研究会第17回研究会で、LDT株式会社の代表取締役CEO白石和也が「葬祭業におけるIT活用と業務改革」をテーマに講演しました。
本講演では「IT活用はアナログとの共存が不可欠であり、さらに地域性や各社独自のオペレーションに合わせたカスタマイズが前提になる」という考え方が中心に据えられました。
ITとアナログ共存の必然性
冒頭、2040年に死亡者数が167万人へ達する一方、就労人口が現在の約4分の3にまで減少する統計を示し、「このままの業務体制では近い将来、現場が回らなくなる」と警鐘を鳴らしました。ただし単純な全面デジタル化は解ではありません。「人が感動するのは期待値を大きく超えた瞬間であり、その瞬間をつくるのは現場スタッフの所作や気配りだ」と強調し、ITで生んだ余力を“アナログ価値”――遺族への寄り添いと現場接客の質向上――に振り向ける必要性を訴えました。
業務を四分類で仕分ける
講演の骨格となったのが次のフレームです。
・やらなくてもよい業務をやめる
・システムやAIで代替できる業務を自動化する
・外部委託(BPO)すべき業務を切り出す
・自社で行うべきコア業務(感動を生む接客)を強化する
まず不要業務を廃止し、次に自動化可能部分をシステム化。そのうえで夜間受電や搬送などはBPOに委ね、空いた人員を接客と地域対応へ再配置する――この順序が、需要増と人手減少を同時に乗り切る土台になると説明しました。
“独自オペレーション”を吸収するカスタマイズ必須
葬祭各社は地域慣習や組織構造が多様で、帳票や業務フローも会社ごとに異なります。白石は「パッケージ型システムをそのまま入れても一部の業務が漏れる」と話し、クラウドを基盤にしたカスタマイズ開発こそが現実解だと主張しました。オンプレミスを維持すればOSサポート終了のたびに高額の改修費が発生するため、常に最新版が保持されるクラウド型へ早期に移行した後、各社固有の業務を吸収する追加開発を行う――これが推奨ルートです。
手書き作業を減らす実装例
講演では次のようなカスタマイズ事例が紹介されました。
電子FAXと銀行振込票自動生成
見積書から発注書までをワンボタンで出力し、手書き・転記作業を約8割削減。
ホームページ連動型問い合わせ管理
Webフォームの入力を顧客台帳へ自動登録。夜間はコールセンターが受電し搬送会社へ連携、翌朝担当者へ完全な履歴を引き継ぐ。
CTI・SMS連携
電話番号ポップアップで顧客情報を即時表示し、通話はAI文字起こし。SMSは開封率9割超で法要リマインドに有効。
会計ソフトとのAPI/CSV連携
二重入力を排除し、経理負担を大幅に縮小。
これらを組み合わせた葬儀社では、見積・請求・発注関連だけで年間423時間、FAX関連で月150時間の削減が確認されています。
アナログ接客が単価を押し上げる
削減した時間は接客強化へ再投入すべきだとし、その効果を示す事例も提示されました。葬儀業界の再編の中の事例として、オペレーションに強みを持つ葬儀社が、他の葬儀社を買収後にアナログ接客を磨いた結果、家族葬の平均単価が70万円から90万円へ上昇し、年間粗利が2億円増もある。ITで捻出したリソースを“期待値超え”の体験づくりに振り向けることが収益向上に直結すると説明しています。
採用力とDXの相関
若年層が敬遠しがちな夜間当直は、コールセンター外注とCTI導入によって大幅に削減可能です。「DXは業務効率化だけでなく、働き方を改善して採用競争力を高める武器になる」と指摘しています。
地域密着ECとアフターで追加収益
ホームページと連動したEC機能を用い、供花・返礼品・相続支援などをオンライン受注すれば業務を効率化した上で「追加収益に転換できる」と説明。地方銀行フォーマットに合わせた振込票自動生成など、“地域仕様”のきめ細かなカスタマイズが前提です。
火葬場予約システム連携の将来像
行政・指定管理者向けの火葬場予約システムを顧客台帳と連動させ、タブレット一台で空き炉確認から仮予約まで完結させる構想も披露。「予約の電話合戦で人手を張り付ける時代を終わらせたい」という狙いが語られました。
まとめ――IT活用とアナログ強化のロードマップ
白石は結びに、①業務を四分類してまず“やらないこと”を決める、②クラウドとBPOで効率化の土台を築く、③浮いたリソースをアナログ接客に集中し“期待値超え”の体験を提供するというロードマップを提示したうえで、「今のうちに業務を整理し、ITとBPOで土台を作り、最後はアナログのコア業務で感動を生む――人は自分の期待を大きく超えた瞬間に感情が動く。期待値を超える質と所作を追求していただきたい」
と呼び掛け、講演を終えました。
■LDT株式会社概要
会社名:LDT株式会社
代表者:代表取締役 白石和也
設立:2019年9月20日
所在地:
<本社>
東京都港区新橋5丁目23-10 片山ビル6階
<福岡支店>
福岡県福岡市中央区舞鶴1丁目1-3 リクルート天神ビル4階
<佐賀支店>
温泉ワーケーションLabo嬉野
佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙738 和多屋別荘内
事業内容:
AgeTech(エイジテック)プラットフォーム事業
AgeTech(エイジテック)関連のソフトウェア開発・提供事業
AgeTech(エイジテック)関連のコンサルティング事業
Webサイト:https://le-tech.jp/
葬儀社向けサービス
・クラウド型葬儀顧客管理システム
「スマート葬儀」(https://smartsougi.jp/)
・葬儀業界専門の転職・求人・人材紹介サービス
「スマート葬儀ジョブ」(https://smartsougi-job.jp/)
一般のお客様向けサービス
・ライフエンディングプラットフォーム
「やさしいお葬式」(https://y-osohshiki.com/)
・僧侶派遣サービス
「やさしいお坊さん」(https://y-osohshiki.com/obousan)
・介護職の求人募集、転職情報
「ケアジョブ」(https://www.mjc-carejob.com/)
・看護師の求人募集、転職情報
「ナースジョブ」(https://www.mjc-nursejob.com/)
・有料老人ホーム紹介
「有料老人ホーム情報館」(https://www.careproduce.jp/showroom.html)
・自宅、老人ホームへの訪問マッサージ
「なごみ治療院」(https://www.nagomi-rehabilimassage.com/)
■本件に関するお問い合わせ先
電話:03-5843-8505(広報)
メール:pr@le-tech.jp